ダブルハイフン(゠)は語の区切りに使う約物だが嫌われている(当然)

今日は2024年12月24日。個人の翻訳事務所ヒノトリホンヤクの本店がある東京都日野市の天候は快晴。最高気温の予想は12℃。
冬だから当然暑くなく、快適です。

今回は、最近読んだ本について書きます。
コンテンツ的にはヨーロッパ系の言語での表記と、日本語の外来語(カタカナ系)表記の関係です。

 

 

書名は、

もういちど読む山川世界史 Plus
ヨーロッパ・アメリカ編
というもので、2022年発行です。

編者が3人
執筆者が18人
という力が入った一冊です。

昔、文系で受験生をやった者にとってはお馴染みの山川出版社(歴史の山川と称されています)が発行しています……じゃなくて発行しました。

 

本家のWebページは、この下のURLのこんな感じです。 WordPress的にリンクを”埋め込む”ことはエラーが出て、失敗しました。

全体として、ダメな書籍ではないので、本家を直接閲覧してあげてください。

https://www.yamakawa.co.jp/product/64093

 

 

この書籍は面白かったのですが、表記スタイルとして色々とおかしいな?と感じた部分がありました。多々ありました。 


ニューアムステルダム(のちのニューヨーク)
New Amsterdam
Nieuw Amsterdam

p. 131

これは、ニュー・アムステルダムではなくニューアムステルダムです。よくある表記です。ラテン文字転写などで、語の区切りなどに用いられる記号の・などが使われていません。


サンクト=ペテルブルク
Saint Petersburg
Санкт-Петербург

p. 126

おそらく原語のロシア語で、ハイフンのような約物があるので、しかたないのでしょうか。
でも、ロシア語の – が = になっちゃうことの理論武装がないでしょう。
サンクト・ペテルブルクだったら、私は文句ありません。

 

ラテンアメリカ諸国
これは英語な表記だったらLatin America(s)だろうと思います。
なぜラテン=アメリカでないの? と思います。p.126の「サンクト=ペテルブルク」とスタイルが違いすぎです。

p. 151


クー=クラックス=クラン
Ku Klux Klan

p. 197

それから、

ガソリン=エンジン
gasoline engine

p. 203

なんか違和感がありますね。 教育業界でのしきたりは知りませんが、一般的に社会人になるとこんな表記はまず見ないはずです。 

 


最も難解なのはここです。 ↓


オーストリア=ハンガリーがボスニア・ヘルツェゴビナを併合。

 

いわゆる「オーストリア・ハンガリー帝国」については、
Austria-Hungary
the Austro-Hungarian Empire
Austro-Hungarian Monarchy
Österreichisch-Ungarische Monarchie (ドイツ語)

ボスニア・ヘルツェゴビナについては、
Bosnia and Herzegovina (日本国外務省による英語っぽい表記)
Bosna i Hercegovina (Serbo-Croatian (Latin))

p. 226

個人的には、「オーストリア・ハンガリー帝国」と「ボスニア・ヘルツェゴビナ」でなんでいけないの? と思いますけど。

 

パーソナル=コンピュータ
personal computer

コンピュータ=ネットワーク
computer network

ソーシャル=ネットワーク=サービス
原典は、ほぼ和製英語の「SNS」

p. 298

こりゃぁ「ない」でしょう。いくらなんでも。
コンピュータ=ネットワーク
なんて、他で見たことないですよ。

 

リーマン=ショック
ほぼ和製英語

p. 300

いや……。いやいや……。普通に「リーマンショック」とか「リーマン・ショック」でいいじゃないですか。

 

ウサマ=ビン=ラーディン
Osama bin Laden

p. 304

確かに人名は、ローカライズとか転写とか外来語としての表記スタイルが難しい世界です。 それは認めますが、違和感ありますね。

 

英蘭戦争が
イギリス=オランダ戦争
Anglo-Dutch Wars

p. 118

イギリスとオランダの間の戦争でしょう。
これは、イコールではなくてダブルハイフンなのでしょう。それはわかっているつもりですが、イギリスとオランダが闘争しているようにはとても見えませんね。

サンタ=マリア=デル=フィオーレ大聖堂
Cathedral of Saint Mary of the Flower
Cattedrale di Santa Maria del Fiore

p. 96

シンプルに言って、=が多すぎる。

 


マルクス=アウレリウス=アントニヌス
Marcus Aurelius Antoninus (Wikipedia 英語)
Marcus Aurelius Antoninus Augustus (Wikipedia ラテン語)

p.38

しかたないのかもしれないが、「マルクス・アウレリウス・アントニヌス」でいいじゃないですか。 =が多すぎて、すごく目障りです。

 

 

マルクス=アウレリウス=アントニヌス

というオオモノが出てきたところでコメントしますが、たしかに人名の表記スタイルはむずかしいです。

Claude Lévi-Strauss

このお名前は、「レヴィ・ストロース」という姓のクロードさんです。社会人類学者。私も大好きです。複合姓なんですね。
この場合、レヴィとストロースの間をダブルハイフンでつなぐというスタイルは、合理的だと思います。「レヴィ=ストロース」で一向に構わないでしょう。
ナカグロ ・ でもいいですが。

 

Levi Strauss
こちらは、「ストラウス」という姓のリーヴァイさんです。 デニムパンツで大儲け、リーヴァイスの創業者でしょう。 似ているだけで、クロード・レヴィ=ストロースさんとは縁もゆかりもないです。


Jean-Paul Belmondo

「ベルモンド」という姓のジャン・ポールさん。 フランスの俳優です。寺沢武一の「コブラ」のコブラみたいでかっこいいです。

 

Olivia Newton-John
「ニュートン・ジョン」という姓のオリビアさん。 シンガーです。複合姓なのですな。 「ニュートン=ジョン」でOKでしょう。
合理的です。

 

 

ここで古典ラテン語の碑文の画像をご覧ください。 単語と単語の間に・(中黒のようなもの)を使っていたこともあるようです。

 

画像を入れろと口うるさく言われているので思わず古典ラテン語の画像を挿入してしまいました。 が、話を戻します。

…………で、このよく意味がわからない = (ダブルハイフン)による単語の区切りです。
どうやら、教科書出版の会社が旧文部省に媚びているというイヤな事情があるみたいです。 旧文部省の内規(あるいはガイドライン)にこういうことが推奨されているとか。 いやーな話ですねえ。

ダブルハイフンが、そういうくだらない理由で教科書業界界隈で使われている件については、たしかに丸谷才一も厳しく批判していました。 

まあ、山川出版社の気持ちも(多少)わかりますけど、やめてほしいですね。

 

パーソナル=コンピュータ

って、それはないでしょう。(笑)

子どもが真似したらどうするんですか。 無責任ですよ。