CATの長所と短所

今日は2024年5月20日(月)。個人の翻訳事務所ヒノトリホンヤクの本店があるのは東京都日野市。
朝は小雨でしたがいまは雨はあがっています。

今回のブログエントリーのタイトルには「CATの長所と短所」と書きました。「CATのメリットとデメリット」と、一般的には書くのでしょう。でも、プロの翻訳業のひとは、こういうときに不用意にメリットとかデメリットと書くのはやめましょう。
なぜかというと、60%くらい和製英語だからです。

やたらにメリット・デメリットと書くクセがつくと、本業の翻訳のしごとのときにもクセが出て、素人っぽくて直訳っぽい文章を書きがちです。
プロフェッショナルになった以上は、「意味が通じればいい」という油断は禁物だと思いますよ。

もっとも、通じなければ話にもならないのですが。

さて、CATです。Computer-aided translation ですね。下に貼り付けるYouTubeのビデオに説明はお任せしましょう。

私がフリーランスの翻訳業のプロになる決心をしたとき、もう何年も前ですが、CATと言ったら泣く子も黙る高価なTRADOSでした。
これはもう当時としてはデファクトスタンダードでしたね。実際にTRADOSのライセンスを買っていないことを理由に外注請負業者としての登録を断られたことが、2回ほどあります。

商売人(プロフェッショナル)なんだから、先行投資としてTRADOSのライセンス買おうかなあ、と悩んだこともあります。
しかし、色々調べてもいくら払えばライセンス買えるのかがわかりにくいし(露骨に一見さんお断りって態度でイヤーーーな感じでした)。それに、Windowsしかサポートしてないというのがいかにも「古っ!」な印象でした。 Macでないと生産性落ちちゃう人間ですので。

FreeBSDもLinuxも使ってるし好きです。だけど、FreeBSDは長年の道楽(趣味)だし、LinuxはMacに何かあったときの、いざという時のバックアップ用途です。生産性は落ちてもいいのですね。

結局、「TRADOS高いし、ライセンス買ったからって仕事を受注できるとは限らないし、いまはいいや」と考えて放置してきました。
そうこうしている間に機械翻訳がかなりの速度で進歩して、同時にコンピュータのアプリケーションはWebアプリがフツウになりました。

2024年のいまでは、翻訳会社の方と会話していてもTRADOSの名前は出てきません。

Webアプリなので基本的にフリーランス翻訳者の端末にはソフトウェアのインストール不要なプラットフォームの時代です。私も、Phrase(旧Memsource)とGlobalLink TransStudio OnlineとSmartlingという三種類のCATツール(いずれもWebアプリ)で商売をやっています。

Smartlingは地味ですが、下のビデオのようなCATツールです。

それで、実はWindowsじゃなくてもTRADOSじゃなくても仕事を取れる便利な現代のCATツールですが、当然のことですが短所もあります。(メリット・デメリットって書かないよ)

しばらくオフラインの翻訳の仕事が連続したとしましょう。ここでひさしぶりにPhraseにログインしたら、画面の構成が変わっていたりして、ちょっとドキドキします。


現に体験したことですが、GlobalLink TransStudio Onlineは予告なく「ファイル」「翻訳」「レビュー」「編集」などの伝統的なメニューが折りたたまれるようになっていたことがあります。あまり目立たない 🔻 みたいなボタンをクリックしないとメニュー自体が隠されたままなわけで、データをセーブしようとしたときにメニューが隠れていると焦ります。

それからMemsourceからPhraseになったあのCATツールですが、最近のCATエディタのスクリーンはこんな感じになっています。

 

この画面右側のツールボックス的なものは非常に重要なのですが、ここでは最上部右端のネコの顔に注目です。

なんだか、目鼻耳はあるけど口が省略されていて、サンリオのアレみたいですね。

この、サンリオのアレみたいなアイコンですが、Phraseのクラウド上で書類を開くときもプログレスバーと同時にスクリーンに大写しになります。
たしか、去年のいまごろまではこんなアイコンなかったんですが…………。

なんだよこのサンリオのアレもどき………………教わってないよこんなインターフェイス。
と思っていたのですが、急に気がつきました。

Computer-aided translationでCATで、キャットだからネコの顔なんですね。(推測です。知りません)

ダジャレかよ。 orz

頻繁にアプリケーションのアップデートがあるのは、むしろ良いことです。 メンテナンスされずに何年もソースコードが放置されているよりははるかに良いです。(モダンなアプリケーションの開発は、アジャイルじゃないと、ね)
しかし、GUIに考えオチなダジャレを入れたり、むやみにコマンドメニューを隠すというのは、少々(かなり)迷惑ですね。

もっと他にメンテナンスするところ、あるでしょう。
例えばセキュリティとか。 既知のバグを潰すとか

セキュリティ。セキュリティといえば。

ひさしぶりにPhraseにログインしようとしてクレデンシャルの画面の構成まで変わっていたりすると、これも少々ドキドキしますよ。
ちがうところに(フィッシングサイトとか)にキちゃったんじゃないなかって。

でも、良いか悪いかはともかく、最近のWebサービスの認証関係は
MSでログイン

とか

Googleでログイン

とかになっていますね。

プラットフォーム単位でのSSOは、早くも時代遅れになりつつあるのでしょうか。短命でしたね。

Webサービス側は、認証関係のことをあまり気配りしないでいいのでサービス自体の改善に集中できるのでイイということでしょう。
ユーザーとしても、気持ちを切り替えていかないとだめかもしれない。
いちいち

「なんでPhraseに私のGoogleのログインIDとパスワードを教えなきゃいけないんだよ!」

と抵抗する時代ではないのでしょう。
時の流れは速いです。

翻訳業界で生き残るためにも、変化を拒む側にならないように気をつけたいものです。

ああ、正直にいいますが、こっちの話です。
他の翻訳者の方々は、ご自由に。変化を拒んでください。

申し遅れましたが、このエントリーのアイキャッチ画像のアイコンは、

でした。 感謝しています。