サソリの毒はポイズンでいいのか
結論から書くと、サソリの毒はポイズン(poison)ではダメです。
本日は2020年6月1日。 天気は小雨。
和製英語の話題と少し離れるのですが…。
現在TVで放映中の東映のTV特撮ドラマ「仮面ライダーゼロワン」で、悪役というか、とりあえず今は敵系の仮面ライダーがいます。 新型コロナウイルスのパンデミックの影響で撮影が滞って、現在は総集編を放映してしのいでいるそうですが。
この当面敵系の仮面ライダーは、「仮面ライダー滅」といいます。(カメンライダーホロビと読みます)彼の基本形態が、「スティングスコーピオン」といいます。 基本色を紫色としています。 これに変身するときに使うオモチ…じゃないやデバイスが、同名のつまりスティングスコーピオンという「キー」なのですが、変身手続きをすると起動音声「ポイズン!」が聞こえます。 たぶん、このオモチ…じゃないやデバイスが発声している作動音なのだと思います。 次に、人工衛星から—ビデオを見直したところ、間違っていました。 訂正します。— 変身者が装着しているオモチ…じゃないやベルト状デバイスのバックル状パーツから(?)巨大なサソリのようなものが射出されて、そのトゲというかハリで変身者を刺します。 この巨大なサソリは、上から(衛星軌道から?)落ちてきますが、変身が完了すると消えるのでナノマシンの群体か、投影されているだけのホログラムなのでしょう。
今日はこの「サソリ」のイメージ(あるいはモチーフ)と「ポイズン」の関係について書きますが…。 これは和製英語ではないけれど、ちょっとヘンです。
サソリの毒も和歌山でカレーに入れられた毒も都心の地下鉄に散布された猛毒サリンガスも、どれも日本語では危険で有害な「毒」と呼ばれます。 でも、英語では、サソリの毒の類(コブラの毒も、ハチの毒も)は、ベノム(venom)です。 毒入りカレーの亜ヒ酸や、毒ガスのサリンは、英語ではポイズン(poison)です。
だから、本当ならスティングスコーピオンキーを使って仮面ライダーが変身するときは、該当するデバイスはデバイス自身が英語が好きなのなら「ポイズン!」ではなく「ベノム!」と発声するべきなのです。 「ベノム!」の方がかっこいいと思いますけどね。
私(個人の翻訳事務所ヒノトリホンヤクの代表です)も、特撮TVドラマを観て専門用語や多少の英単語を覚えて育った日本人のオトコです。 「ベノム!」とやった方が子どもたちの外国語学習のためにも素晴らしいことだと思うのですが…。
ベノムとポイズンを区別する方法を調べました。
英語圏でも、venomとpoisonの違いって何?というQ&AはWeb上に複数あります。
その中でも、わかりやすい説明は、これでした。
「お前が噛まれてお前が死んだら、それはvenom。 お前が噛んでお前が死んだら、それはpoison。」
翻訳をやっていて言外にディスられることがあるのですが、その背後にあるのは日本語と外国語の語彙が一対一対応しているのだろう、という誤解だと私は思っています。
「日本語と外国語は、言葉が一対一で置き換えられるはずなので、包括的な辞書があれば翻訳なんか時間さえかければどんどん出来るだろう」という誤解と偏見です。
もちろん、そんなことはありません。
日本語ではハチ(蜂)の一語でくくられている昆虫は、英語ではbee、wasp、hornetなどです。 英語に翻訳するときは、(仕事なんですから)気合を入れて調べるか、「例の飛び回る昆虫なのだけど、beeなのかwaspなのかhornetなのか、わかんない。」と正直に降参するかしなければならないのです。
ちなみに、waspとhornetは、私も何回か調べましたがいまだに写真一枚や実物を観て区別する自信がありません。 ということは、他人に教えることも出来ません。
似たような例に、二人称の代名詞があります。 英語のyouに該当する日本語は、何十種類もあるぞ、と教えたら友人のアメリカ人は目をぐるぐる回していました。
更に余談ですが、このサソリの尾部のトゲというかハリから搾り取って得られるベノム(毒液)、非常に高価だそうです。 人によっては、地上で最も高価な液体と呼んでいます。
がんやマラリアの治療に利用できる物質を含んでいるそうです。 もちろん猛毒な物質なのだろうと思います。
現在世界(人間社会)を激しく揺さぶっている新型コロナウイルス。 この感染症の治療にサソリのベノムが有効だなんていうことになったら、(万一、ですよ。 私は知りませんし、風説を流布する気もありません。)またサソリの毒の奪い合い、そうでなくても高い毒液の価格がさらに高騰ということになるのでしょうか。
追加で余談ですが、新型コロナウイルスのパンデミックに関しては、やはり起源は中国で彼らの悪食がきっかけだったんだ、中国は責任を取れ、なんてことを主張している人間がいますが…。 ここまで感染症もウイルスも蔓延してしまうと、もはや起源がどこかとか追求している場合ではないと思います。 それこそ、「ある種の漢方薬だけがCOVID-19の治療に有効だ」などということになったら、どうするんでしょう。 中国とも、ほどほどに仲良くしておいた方がいいんじゃないですかね。
どうせ人間は病気を選べないんですから。