今日は2021年2月27日。 天気は快晴。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴う緊急事態宣言2.0がまだ解除されていない東京からブログをお送りしています。
ヨーロッパやオセアニアでロックダウンがいくつか起きていますが、翻訳業界に限って言えば深刻なリセッションとは状況が異なるようです。 待望のワクチン出荷と接種が(海外で)始まっているので、心理的にもトンネルの出口の明かりが見えてきているのかもしれません。
現実に私ことヒノトリホンヤクの代表も、ビジネス拡大のチャンスに恵まれました。 1月と2月に複数の翻訳会社と契約することができました。
しかし、木曜日に翻訳会社のトライアルでひとつ不合格という選考結果をいただいてしまい、やはり私なんてまだまだだなぁと反省しております。

今日は2021年2月27日(土)ですが、朝から気晴らしに隣町のJR八王子駅まで歩いてしまいました。 50%くらい覚悟していたとはいえ、トライアル不合格の知らせを受け取ると落胆しますよ。
目的地まで往路は13,000歩、所要時間は約105分。
百均のセリアで買い物をして、バーガーキングで食事をして、JRとバスを使って帰宅してトータルで16,500歩のウォーキングエクササイズです。

閑話休題。 その翻訳会社の「トライアル」ですが。 いったいどんなものなのでしょう。
通常、フリーランスの翻訳者は翻訳会社の「トライアル」と呼ばれるテストにパスしないと翻訳会社の外注業者として仕事がもらえません。
もっとも、(再度)ちょっと脱線すると、世の中には翻訳会社など通さなくても仕事を受注して生活していけるプロの翻訳者もいるそうです。 すごいですね。
たとえば、このWebサイトのような自前の営業チャンネルでじゅうぶん集客ができて直接取引のクライアントがいるケース。 あるいは、独自の人脈で仕事を確保できる翻訳者のケース。 翻訳学校などで人脈を築いた人や、徒弟制度のようなものですごい師匠の弟子になったケース。 よくわからないけどなぜか順調に生活できている天才。
まあ、上記のケースは私の想像ですが。
そもそも、日本の翻訳会社は、一般に三年間のプロフェッショナルとしてのキャリアがないと外注翻訳者としての登録への応募さえ許してくれません。 よく言う「門前払い」というやつです。 政治家や芸人の一代記じゃないんですから、押しかけて毎朝5時に翻訳会社や師匠の玄関で箒を使って掃除をしても、ムダですよ。 おそらく、たいした実力もないのに軽い気持ちで応募する「志望者」が多くてうんざりしているのでしょう。 供給過剰なのですね。
これが海外の翻訳会社だと、さすがにもっと実力主義です。 私の経験から言っても、案外実績や経歴は度外視して、履歴書とトライアルの結果で判断してくれます。
すでに供給過剰ですが、将来フリーランスの翻訳者になりたいという方もいるでしょう。 私自身もこの職業は天職だと思っていますし、性格や価値観やライフスタイルの志向が適合すればこんなに素晴らしい職業はほかにそうないと信じています。 普通のフリーランス翻訳者にとっては、トライアルは避けて通れない試練です。 私は試験全般が好きではありませんが、普通はトライアルを受けないとトライアルには合格できません。 これが現実です。 当たり前の現実です。 トライアルに合格しないと、翻訳会社からの仕事は受注できません。

うちの翻訳事務所も開業から早くも3年と9ヶ月が経過して、それなりにトライアルの数をこなしました。 フリーランスの翻訳者を志望している方の参考になるかもしれないので、一部をご紹介します。 ごく一部と言っていない点にはご注意ください。 これで私の経験の大半ですとも言っていないこともご注意ください。 想像するのも自由です。 それから、過去においてすべてのトライアルに合格しているわけではありません。 私は天才でも帰国子女でも真のバイリンガルでもないので、世の中はたいして甘くないです。 もっとも、Facebookのプロ翻訳者コミュニティで知ったのですが、プロフェッショナル20年のキャリアを持つベテランでも、トライアルに落ちることはあるそうです。 人生いろいろですね。

以下が、私が経験した翻訳業界のトライアルの具体例です。 なにかの参考になればうれしいです。

(a) マカオのホテルアンドリゾートの特別展示アクティビティ(イタリアンなスーパーカーの歴史展)のフライヤーのテキスト(英語)を和訳する。 ソースは800語程度。 納期は特に指定がなかったが、4日後に提出した。

(b) 1,000語程度の観光業界の記事(英文)を和訳する。 MS Wordで原稿が送られてくるので、和訳した文章を上書き入力して提出。 期限は一週間程度。

(c) 300語程度のIT業界の英文リリースを日本語に翻訳するテスト。 送られてきたMS Wordファイルの原稿に和訳文を上書きして提出。 納期は一週間後を提案されたが4日後に提出。 時間が与えられているのだから、品質が悪かったら無能。 20回くらい見直して提出。

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(d) 翻訳校正と品質管理のテスト。 日本語の訳文と英文原稿がemailで送られてくる。 誤訳、タイポ、数字の転記ミス、誤字脱字、書式の間違い、日本語の文法ミス、訳漏れ、不必要な和訳テキストなどを見つけ出して校正し、emailで送り返す。 制限時間1時間。 英文原稿は350語程度。

(e) 400語の英語(金融についての学術論文の梗概)テキストを和訳するテスト。 オンラインでWebブラウザ上で受検。 制限時間3時間。一度始まったら一時停止できない。 ソースをダウンロードすることは可能。 ただし、翻訳結果の和文を入力するテキストフィールドは、コピー&ペーストができないようになっている。 おそらくGoogle翻訳などを使わせないための縛り。
合否は二週間後に通知された。合格通知には文学的とさえ言える水準のレビューがついてきた。

 

(f) 翻訳ではなく、日本語Webライティングの仕事。 但し、英語が読めないと仕事の指示書がわからない。 英語で細かい指示が与えられて、ヨーロッパ観光系の都市紹介の日本語記事(1,200字程度)を書くテスト。 制限時間は2時間。

(g) オンラインで非常に細かい履歴書的な応募手続きを実施。 英文和訳のトライアル(テスト)はなかったが、実績リスト(英文和訳と翻訳チェックの仕事、内容はなるべく多数。言語ペアとプロジェクトの説明、分量を明記)の提出を求められた。 「とある日本の光学測定機器メーカーの製品カタログ」とか「とあるアメリカの法律事務所の広告」という説明ではダメで、クライアントの具体的な名前を全部書けと言われて再提出。トライアルがなかったが、かわりに実績リストを詳細に作り込めと言われたのは、おそらく翻訳会社に日本語の翻訳を評価するリソースが不足していたからだろう…と邪推している。

普通のフリーランス翻訳者が避けて通れない「トライアル」について、私の少ない経験からご紹介しました。 私はテストを受検するのは好きではないです。 でも個人事業主として開業したてのころ、たかだか3年前には日本国内ではトライアルを受けることさえ許されませんでした。 それが最近は受かったり落ちたりしてもトライアルを受けるチャンスはもらえるようになったのです。 ありがたいことです。 まだまだベテランの諸先輩方にはかないませんが、精励精進します。