今日は2020年10月18日。 最近、関東のとある公立中学校の2年学年主任の先生から取材の依頼があり、お請けしました。 (私の地元コミュニティの学校ではないです。 また、私の出身校でもないです。)

このコーヒーを傍らに仕事をしているフリーランス男性の写真はいただきものです。 
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実際には、「取材」は生徒さんと私との直接の書面でのやりとりです。 この生徒さんは翻訳者(あるいは翻訳家)という職業に興味があり、実際の職業人に色々と聞いてみたいことがあったというわけです。
COVID-19のパンデミックの影響がもちろんあるのでしょうが、書面で取材、というところが良いですね。

私も個人事業主として翻訳事務所を開業して3年、しみじみとわかってきたことがあるのです。 それは、テキストを読む(典型的には書面)ことが中毒的に好きでなければ翻訳者という職業は務まらないということです。 天才は別ですよ。

当然のことですが、翻訳者の仕事というのはテキストを読むことから始まります。 営業のための対人コミュニケーション能力とか、言葉を効率的にリサーチする能力とか、社会的な常識とか、それは色々な効能書きでこの業界はあふれています。 お説はいちいちごもっともですが、翻訳を生業とする者にとってはそういうことはすべて枝葉末節です。 原稿というか、ソースになるテキストを読まずには翻訳という業務は成立しません。 文章を読むのが苦痛であったり過大な負担になる人は、翻訳者ではなく別の職業をみつけるべきです。

それから、職業柄ということで言えば、人と会ったり交流する時間がなければないほど仕事がはかどるのが翻訳業です。ナニソレ、とお思いの社会性があって意識が高い方もいるでしょうが、事実なのだからしょうがいないでしょう。 (笑)

そういう仕事なんだから、放っておいてください。 今年(2020年)の春、緊急事態宣言が出されて「ステイホーム」と行政やメディアが連呼しました。 私が仕事場としているコワーキングスペースも利用者が激減しました。 当時、そこの職員というか、ファシリテーターやコーディネータ的な方に「今日もここ、人がいなくてさびしいでしょう」と声をかけていただいたのです。 おそらくその時の私は一瞬きょとんとしていたことでしょう。 内心では、仕事場に人がいないと、仕事がはかどってはかどって正直に言ってウキウキしていました。 現実問題としては、仕事場を消毒、換気、清掃してくれている職員の方々にはとてもお世話になって、感謝の言葉しかないのですが…。 私は「仕事場ががらんとしている」「ぼっち」と聞いてうれしくてヨダレが垂れてくるくらいなので、翻訳者というのはそういう社会性の面で問題がある人間には天職だと確信しています。
そんなわけでオフラインの職場訪問や職場体験なしの書面での取材というのは私にとっては最高です。 書面での取材しかできなかったことを生徒さんがどう感じているかはわかりません。 わかりませんが、そんなことをなんとも思っていないくらいに想像力で情報を補完して進路選択に活用できるくらいのパーソナリティを備えた少年少女の方が、翻訳者という職業には向いているのではないでしょうか。 「ないでしょうか」などと判断を保留して責任を回避しているようで恐縮ですが、私は実はそう確信しています。 「悪いことはいわない。他人と交流しないとさびしいと感じるような社交的な性格ならば翻訳者ではなく別の仕事をみつけなさい」とアドバイスをしたいくらいです。

中学校の生徒さんとのやりとりの内容は、ここではもちろん書けません。 質問も、私からの回答も、個人的なことすぎます。
それにしても、私が中学生だったころは、将来のキャリアのことなどほとんど考えていませんでした。 職業人に取材してなにかレポートをまとめるなんて、いつの時代も中学生は大変ですね。
(私の中学生時代も、それなりに大変だったのですよ。 わけがわからない校則がたくさんあったのも、服装のことを細かく規定されたのも、私の人生では中学校の三年間だけでしたから。)

おそらく「総合的な学習の時間」という教育プログラムの一環だったのでしょうね。 40年前にはそんな授業はありませんでした。